木造住宅の確認審査省略制度(4号特例)が大幅に縮小されます。
これまでは2階建以下、500m2未満の木造建築には適用されていなかった構造計算書審査が、今後は平屋建て且つ200m2未満にまで縮小されます。
つまり、一般的な2階建て木造住宅も構造計算審査が必要になるということです。
理由は、省エネ基準適合義務化によって建物重量が増えているにもかかわらず、木造建築の構造関係規定は過去のままということが全国的に重大な問題になっているからです。
建物重量が増えている要因は、
- トリプルガラスの採用
- 断熱材増量
- 太陽光パネルの設置
懸念材料
このことによって予想される問題点として、
- 確認審査期間の長期化
- 木造住宅の設計コストUP
- 木造住宅の設計期間の長期化
- 構造設計技術者の不足
- 既存木造建物再利用が抑制される
1.確認審査期間の長期化
現在、一般的な2階建木造住宅の審査機関は14日となっています。
一方、木造以外の構造で同規模住宅を計画すると構造計算書審査が加わり、審査機関が35日になります。
審査内容が増えれば時間もかかりますので、審査機関の長期化が予想されます。
2.木造住宅の設計コストUP,3.設計期間の長期化
一般的な木造住宅規模の建物の場合は、詳細まで構造計算を詰めていないことが殆どです。
必要書類として構造計算書が増えれば、書類作成コストや作成する時間コストが設計料に上乗せされます。
4.構造設計技術者の不足
構造設計技術者にも構造によって得手不得手があり、中でも木造に慣れている構造技術者は経験上少数です。
また、製材された木材が構造計算ラインに適用できるのかも問題で、木材は生き物なので強度が均一ではありません。
集成材であればバラつきは少なくなりますが、製材された木材を使用する機会が少なることも懸念されます。
5.既存木造建築物再利用が抑制される
既存木造建物にこれからの基準を当てはめていくと、構造計算をしても構造耐力が不足するのは明らかなので、空き家問題の解決や既存ストック再利用に水を差すことになります。
しかしながら、「既存改修であれば省エネ基準に適合しなくても良い」という論理になるのは本末転倒なので、個別の基準を設けるなどの対策を考えていくべきだと思います。
考察
ハード面への規制は強化されますが、ソフト面や運用面についての創意工夫もあってよいのではと思いました。
設計期間や審査機関が長期化すれば、その分人の活動が生むエネルギーも増えるのではないかとも思えるのです。
近視眼的にならず、もっと広い視野、横のつながりで地球温暖化対策を考える必要があると思っています。
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